滅失登記をする場合において、複雑に感じるのは、「相続が発生しているが、相続登記をしていない場合」があげられます。
順当な流れですと、相続してから解体という気もしますが、相続の登記をしないで、滅失登記をすることが可能です。
つまり、
単純に相続人が滅失登記の書類をそろえて申請することで滅失登記が完了します。
やることはシンプルなのですが、難しく感じることがあるとすれば、そろえる書類に聞きなれないものが多いから。
戸籍謄本まではともかく、除籍謄本、戸籍の附票、住民票の除票とくると、思考停止に陥ります。逆に言うと、書類の内容と意味を理解できればクリアになりそうです。
一つ一つひも解いていきたいと思います。
相続人の誰が滅失登記を申請するの?全員?
まずはじめに、理解しておきたいのが、滅失登記の申請は、相続人のうちの一人で行えます。
例えば、亡くなっている父親名義の建物を解体して、長男が届け出をする場合。3人兄弟だとすると、母親が存命の場合、相続人は4人になります。
ですが、長男のみの申請で大丈夫ですので、申請者を確認する実印と印鑑証明は長男のみで足ります。
これは実務的にはかなり楽になるポイントですね。
滅失登記の必要書類は?
滅失登記の基本的な必要書類は、下記コンテンツでも紹介しておりますので、ご参照ください。申請人が用意するのは、基本的には印鑑証明書ぐらいです。後は業者が用意してくれます。
相続人が滅失登記をする場合は、上記の内容に追加して必要となる書類があります。
それは、「名義人と相続人の関係が分かる書類。」です。
その相関図を知る為に下記書類が必要となります。
名義人が亡くなっていること→戸籍謄本(除籍謄本)、住民票の除票、戸籍の除票
申請者が、名義人の相続人であること→相続人の戸籍謄本
具体的にはどんな書類なのかを見ていきましょう。
戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、戸籍の附票とは?
言葉だけ見ると難解ですが、一つ一つ読み進めれば解読できます。
戸籍謄本と除籍謄本の違い
戸籍謄本はそれなりにメジャーな内容ですので身近と言えば身近かもしれません。
戸籍とは、夫婦と未婚の子の情報(名前、生年月日、出生地、続柄等)が記載されているものです。
子供が結婚すると、子供はこの戸籍から抜けて、新たな戸籍をつくることになります。
その場合、もともと記載されていた戸籍からは除籍されることになります。
また、亡くなった場合も戸籍からは除籍されることになります。
そして、戸籍謄本に記載されている全員が除籍された場合に、もともとの戸籍は全員除籍されることになります。
この全員が除籍されている謄本を除籍謄本と言います。
ちなみに、戸籍謄本と戸籍抄本とありますが、戸籍謄本は家族全員の記載があるもので、戸籍抄本はその中の個人のみの記載があるものです。それを理解すると戸籍謄本という言葉の理解が進むと思います。
つまり、名義人の戸籍が閉鎖されていなければ戸籍謄本、閉鎖されていれば除籍謄本を取得するということになります。
住民票の除票とは?
住民票は、市区町村の管轄の住所を記録しているものですが、引っ越しや死亡によって、その市区町村の住人でなくなった場合に、住民票から除かれる(抹消される)ようになります。これを除票と言います。
つまり、住民票の除票とは、抹消された住民票のことを指します。
ただし、この保管期限が5年となっていますので、5年以上経過した場合は取得できなくなります。(自治体によっても異なります。)
戸籍の附票とは?
戸籍の附票とは、住所の記録である点は、住民票と同じですが、戸籍毎の住所の記録が残っています。
例えば、住所が数回変わった場合、住民票では、現住所と前住所ぐらいしか記載がないので、その前の住所を証明したい場合、住民票の除票をたどっていくことになります。
それは結構大変なので、その場合は、戸籍の附票を確認すると、戸籍内での住所の移転の履歴が記載されていますので、この場合は、一度で確認することができます。
結婚して新たな戸籍にうつっている場合などは、婚姻前の戸籍と現在の戸籍の附票を取ればすべてつながるということですね。
住民票と戸籍の管轄の違い。どこで取得できる?
戸籍謄本や、附票、住民票、除票。管轄の違いによって取得できる場所が異なる場合がありますので抑えておきましょう。
住民票に関するものや印鑑証明書は、現住所のある市区町村の管轄になります。
なので、現住所のある区役所での取得となります。
戸籍に関しては、本籍のある市区町村での管轄となります。なので、例えば本籍は「実家のまま。」と言うような場合は、実家の市区町村の区役所等での取得となります。
同じ市区町村の管轄だと同じ場所で取得できますが、違うと少し大変です。時間はかかりますが郵送も出来ます。
まとめ
相続した建物を建て替えるというケースは今後もますます増えていくことかと思います。
その場合、相続登記をしていない場合でも解体後の滅失登記を相続人から行えます。
色々聞きなれない言葉が、出てきて戸惑うことも多いですが、いずれも役所でそろうものばかりですので、安心して進めたいところですね。