地震に対する備え。
新築する時には、しっかりと考えておきたいものです.
東日本大震災を機に、住宅を選ぶ際に、地震への対策の優先順位は上がってきていました。
そして、だんだんと増えてきているのが、制震住宅です。
住宅の地震対策の考え方は、おおまかに3種類あります。
耐震、制震、免震
の3種類。
それぞれの違いと、メリット・デメリットおよび概算費用をみていきます。
耐震とは?
耐震とは、その名のとおり、地震に耐える構造のものを指します。
日本国内で建物を建てる時は、建築基準法で、耐震の基準値が定められています。
今は、確認申請をせずに建築するということはあり得ないので、新築する場合、建築基準法の程度の耐震性能は最低限もっています。
そして、耐震性能の指標として、耐震等級という基準がもうけられていて、それを取得すると、胸を張って耐震構造です!
と言えるようになりますが、耐震等級を取得してなくても、耐震をアピールすることは可能ですし、耐震等級を取得していないくても耐震性能に優れている建築物はあります。
耐震等級は義務ではないということです。
なら何のためにとるのか?
というと、建売住宅だと販売するアピールになるということはあります。
また、地震保険が割安になるというメリットがあります。
どれぐらいかと言うと、
耐震等級 | 地震保険の割引率 |
3 | 50% |
2 | 30% |
1 | 10% |
耐震等級3だと、半額になるんです。これって結構大きい割引ですよね。
ですが、耐震等級を取るのはタダではありません。
業者にもよりますが、申請費用で10万円~20万円程度かかります。
長期的に見たら、耐震等級を取得した方がメリットは出てきますが、短期的には割高になることも?
とは言え、ずっと地震保険をかけておくなら、10年目以降は割安に転じると思います。保険金額にもよるとは思いますが。
耐震の考え方
耐震の考え方のキーワードは「固く」です。
建物を地震に耐えるようにする為には、より固くすることで倒壊を防ごうという考え方です。
その結果、筋交いをより強く入れたり、パネル工法やツーバイフォーのように面で剛性を保つようにしています。
イメージとしては、ぎゅーっと丸まって固くするイメージですね。
制震とは?
次に制震の説明です。
耐震は固くして耐える考え方だったことに対して、
制震は、震動を「吸収」するという発想のもと出来ています。
これは百聞は一見にしかずということで、ミライエのプロモーションをご覧いただくのが分かりやすいかと。
動画の中の57秒当たりで、ゴムの玉を二つ落とす実験のシーンがありますが、それがまさに、震動を吸収するということです。
このゴムの玉、以前ビックサイトの建材展でもらったことがあるのですが、自分でやってみると結構楽しいです。
普通はバウンドするのに、ビタッ!!!っと玉が止まるので、これは凄いなと。
ということで下記を御覧ください。
なかなか見事なプロモーションだと思います。
この中で、地震保険に入るより・・・というくだりは、耐震等級を取らないことによる「割引なしへ」のPRかとも思うわけですが、実際はわかりません。
個人的にはプロモーションの内容には同感です。
免震とは?
免震とは、文字通り、震度を免れるという構造です。
考え方は、地面の揺れと逆の方向に建物を動かき、震動そのものを相殺して建物に伝えないという発想です。
耐震・制震・免震で考えた時に、このシステムが最強だと私としては、思っています。
躯体(建物)自体に、揺れを伝えないメリットは、建物の損傷を押さえることができるということです。
建築基準に基づく耐震の考え方の根本は生命を守ることです。
もっと言うと、倒壊させずに地震を免れ、命の危険を回避することです。
その想定は、一度の地震に対して、耐えうることができるか?
という基準です。
言ってしまえば、その後の補修や建替などは考えていないという実態があります。
資産を守るという観点ではなく、あくまで命を守るという観点です。
もちろん命を守ることは大事ですが、資産を守ることも重要です。
ハウスメーカーのCMの中で、繰り返し何回耐えたかという振動実験を流しているところがありますが、これが主張しているところは、資産としての建物も残せますよ。
ということではないでしょうか。
そう考えていくと、免震が本来は望ましいのだと思います。
それゆえ、タワーマンションや大型マンションや建物は免震装置がついていることが多いですよね。
ちなみに、冒頭の写真の五重塔。
法隆寺の五重塔は日本最古の木造建築物ですが、これは免震構造になっています。
この原理を応用して、東京スカイツリーの免震構造が設計されています。
耐震・制震・免震の違い~メリット・デメリットの比較表と概算費用~
これまで、耐震・制震・免震の特徴を紹介していきました。
ここでは、それぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。
耐震構造のメリット・デメリット
耐震のメリット。
安い。耐震等級で地震保険が割引になる。どこのハウスメーカー、施工店でも相談可能。もちろんメーカーの採用している耐震方法はあるが、注文住宅で依頼すれば不可能ではない。
費用に関しては、ハウスメーカーや工務店の本体工事によるので、別途追加となるものではない。
デメリット
繰り返しの強震に弱い部分がある。
制震構造の費用とメリット・デメリット
メリット。
耐えるよりも吸収するという仕組みの為、躯体へのダメージが少ない。
繰り返しの震動に強い。
デメリット。
耐震に比べると費用がかかる。制震ダンパーの配置によって、ねじれが生じる場合があるので、しっかりした構造計算が必要。
ねじれが生じると、建物の一箇所だけに余計に負荷がかかってしまうということも起こりうる。
費用に関しては、1棟あたり、50万円程度と思われる。
建物の大きさや、施工店によっても異なるのであくまで目安としてみてもらいたい。
免震の費用とメリット・デメリット
メリット、地震に対しては抜群の効果を持つもの。
デメリット、費用も抜群。一戸建て住宅の場合、200万~300万円程度など。
住宅への設備としては、まだまだ扱いが少ない。
耐震・制震・免震の比較表
メリット・デメリット・費用をまとめると、
メリット | デメリット | 費用 | |
耐震 | 耐震等級という基準で分かりやすい どの業者でも対応可能 | 繰り返しに弱い | 本体に含まれる |
制震 | 躯体が損傷しにくい 繰り返しの地震に強い | 詳細が配置計画が必要 対応している業者が限られる | 50万円程度 |
免震 | 地面と建物と縁を切る為、躯体の損傷が少ない。 繰り返しの地震に強い | 対応している業者非常に少ない 事例があまりない。 | 200~300万円程度 |
免震は良いけどなかなか技術的にも費用的にも課題は多く、
現状としては、耐震×制震という構造を主張していきている企業が増えてきている状況。
次第に制震は当たり前という状況も考えられなくはないと思われます。
以上、耐震・制震・免震の違いとメリット・デメリット、また費用について紹介してきました。
これから新築を検討される場合は、何かしらの地震への備えを確認しておくことは大事ですね。