建築家・坂茂氏。
建築業界のノーベル賞と言われる、プリツカー賞を受賞しています。
歴代の受賞者は、世界的に著名な建築家。
日本人での過去の受賞は、たったの5回。そして6回目の受賞が坂茂さんです。
プリツカー賞歴代受賞者
1987年 | 丹下健三 |
1993年 | 槇文彦 |
1995年 | 安藤忠雄 |
2010年 | 妹島和世・西沢立衛 (SANAA) |
2013年 | 伊東豊雄 |
2014年 | 坂茂 |
坂茂さんと言えば、「紙の建築」で有名です。「紙で建築?」というところにまずはインパンクトを受けます。
そして、この紙の建築に対する活動に並々ならぬ想いと生き様が垣間見えてとてもカッコイイです。
※上記写真は坂茂さんの代表作の一つポンピドゥー・センター・メスです。
西日本豪雨の支援の紙管間仕切りは実は、24年前からの取り組み
坂茂氏が、避難所での紙管間仕切りを設置しているニュースが流れていました。
今回の西日本豪雨で初めて知った方もいると思いますが、この取組は実は、24年も前から行われている取り組みになっています。
はじまりは、1994年。
アフリカのルワンダの難民キャンプでシェルターの建築が行われていました。
そこでは、木を伐採してフレームを組みシートを貼るという作り方でしたが、木の伐採が環境問題となり、木のフレームの代替材料として、紙管が良いのではないかと考えられたことがことの始まりです。
これが、紙管による緊急用シェルターの開発が正式にプロジェクトに採用され、紙管間仕切りの発祥となっています。
この時が、1995年です。
そして、神戸の大震災においても力になりたいと思い、紙の教会(鷹取教会)の建築へと繋がっていきます。
それ以降、新潟中越地震の避難所用紙の家、中国、四川大地震復興支援の紙管による仮設校舎や仮設住宅、東日本大震災での避難所の間仕切りシステム・・・
というように至るところで避難所への紙管による仮設支援を行っています。
坂茂氏の根底にある建築家としての思い
建築の構造材に紙を使うというのは、普通であったら考えられないことだと思います。
しかし、コストの問題や緊急時に簡易的に使えるというメリット、また再生紙を利用できることによる環境への配慮などを考えるとこれほど、理にかなった建築物はないのではないかと思います。
それを取り組み出した当時は今ほど、環境問題が問題になっていなかった時代です。
その時から、坂茂さんには、建築家としての想いがあったとのことです。
それは、
「弁護士や医者が社会に貢献しているように、建築家も社会に貢献できることがないかとずっと考えていた」
出典:NA 建築家シリーズ07 坂茂 日経アーキテクチャア遍
シンプルで力強い言葉だと思います。
一見、建築家というとカッコイイ作品を建築して評価をうけてというイメージがありますが、そうではなくて、地道に社会貢献を目指すその姿に力強さと、生き方としてのカッコよさを感じます。
また、西日本豪雨においても、岡山県倉敷市真備町地区の避難所で紙管による間仕切りを行った時に、
「住環境を改善するのも建築家としての仕事。プライバシーを確保して被災者の負担を軽減したい」
出典:http://www.sankei.com/west/news/180713/wst1807130072-n1.html
と語っています。
マザー・テレサ社会正義賞を受賞
2017年に坂茂さんは、「マザー・テレサ社会正義賞」を受賞しています。
その名前からも想像できるように、マザー・テレサ社会正義賞は、人類に対し類いまれな貢献をした個人や組織に贈られる賞です。
実は、この賞を受賞した方は、日本人で坂茂さんが初めて。
さらに凄いのは、建築家としてこの賞を受賞したのも坂茂さんが初めてです。
坂茂さんの建築家としての生き様、人としての行動力や想いの強さ。そして語られる言葉は素朴ですが、それでいてどんなカッコイイ言葉を並べるよりもかっこよくて感動を覚えます。
そして、坂茂さんは「マザー・テレサ社会正義賞」を受賞した時に、語っています。
「建築家として初めて受賞したことを光栄に思う。建築でも人道支援を行えるのだと、約20年の活動が認められたのではないか。こうした活動には若い建築家たちも興味を抱き始めているので、動きは全世界に広がっていくだろう」
出典:産経ニュース
西日本豪雨の被災地での支援も、坂茂さんと、学生グループで紙管間仕切りを設置しています。
この体験をして、坂茂さんの想いと行動に触れた方達がどのように活用していくのか楽しみと希望を感じます。
実際の紙管間仕切りの画像と活動状況
紙管間仕切りがどのようなもので、どういう形で設置されているかは、坂茂さんのHPにて記載されています。
このページには、被災地支援の募金に関しても告知があります。
もしも坂茂さんの活動に共感を覚えて力になりたいと思うのであれば、こういった形で力を送ることもできると思います。
(参考文献:NA 建築家シリーズ07 坂茂 日経アーキテクチャア遍)