借地権って一言で言っても、旧法借地権、普通借地権、定期借地権という種類がありますが、そもそも借地権に違う種類があることもあまり知られていないのではないでしょうか。
断片的な知識は入ってきているので、なんとな~く「借地権ってこういうものかな・・・」と知っているつもりになっていることもあるかと思います。
実は借地権の種類によって、内容は大きく異なります。不動産という金額が大きいものを考える上で、借地権の違いを知らずに間違えた・・・ということはあまりに残念ですので、この機会に借地権の種類を区別しておきたと思います。
借地権という言葉からして難しく感じますので、図解して分かりやすく解説してみたいと思います。
借地権の種類を図解してみる。
まず、借地権の種類を図解してみると、以下の図のようになります。これをもとに順を追って説明していきます。
借地借家法の成立が区別のポイントです!
図にある、1992年(平成4年)8月1日が、借地権を理解する上での大きなポイントになります。
この日は、借地借家法という法律が施行された日であり、それ以前の法律は借地法という法律でした。
借地権について見るときには、新法か旧法かという点は必ず明示されますが、借地法の対象となっているものを旧法、借地借家法の対象となっているものを新法と呼ぶようになっています。
呼び名が色々あるのでややこしいですが、旧法での借地権を、旧法借地権と呼び、それに対して新法の借地権を普通借地権または定期借地権と呼ぶようになっています。
それぞれについて詳細をみていきます。
旧法借地権とは?
旧法借地権は、借地権付一戸建の新築物件でも一般的に取り扱われている借地権です。
新築の場合、購入時に、新規に20年間の期間を定めた賃貸借契約書を地主と結ぶことになります。
その契約では、20年後に更新が出来ること、その時に更新料が発生すること。また地代の取り決めや支払い方法などの契約を結ぶことになります。
契約期間は、20年が多いですが、合意があればそれ以上となることもあります。
建物所有を目的とした契約になりますので、建物がある限り一方的に地主が賃貸借契約を破棄するということは出来ません。
地主が返して欲しくても返してもらうことが出来ない、借り主に対して強い権利となっています。
詳細は下記コンテンツでも記載しておりますのでご参照ください。
普通賃借権と旧法賃借権の違いは?
旧法か新法かの違いが普通借地権と旧法賃借権の根本的な違いとなります。
大きな違いとしては、賃貸借契約の契約期間が違ってきます。
旧法は、非堅固建物(木造等)は20年毎の更新。堅固建物(鉄骨、鉄筋コンクリート造など)は30年毎の更新を基本としています。(双方の合意があればそれよりも長くすることはできます。)
それに対して、新法の普通借地権では、建物の種類に関係なく、一律に30年間の期間を設けております。そして、更新時には、最初の更新は20年間、それ以降の更新では10年間の契約期間となります。
新法が出来た背景から生じた更新の可否の違い
新法と旧法の違いを理解する上で、「なぜ新法が生まれたか?」という点をおさえると理解しやすいです。
旧法では、借り主が有利だった為、地主が土地を返して欲しくても、借り主に落ち度がないと厳しい状況でした。その結果、地主有利な法律が必要との判断で新法が生まれました。
よって、更新期間も更新する度に短くなりますし、建替に対してもその可否が変わっています。
建替の時に承諾が必要なのは旧法も新法も同じですが、新法の場合承諾なく建替えた場合、1回目の更新の前は、残りの契約期間は保護されることになり、更新後は、地主から解約の申し出があった時点で借地権は消滅するものとなっています。
さらには、地主が承諾をしない場合、正当な自由が必要とされており、旧法では、明確に正当事由を記載していなかったのですが、新法の場合、立ち退き料の支払いでもOKとなりました。
このように地主に対して有利になっているのが新法です。
普通借地権と定期借地権の違い
続いて普通借地権と定期借地権の違いを見ていきます。
普通借地権も定期借地権も新法のもとでの借地権です。
大きな違いは、「更新の可否」です。
更新できるのが、普通借地権。
更新できないのが、定期借地権です。
そして、定期借地権には、3種類の契約形態がありますので順に説明していきます。
定期借地権の3つの種類
定期借地権には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の3つがあります。
いずれも更新をしない契約ですので期間満了とともに借地権は消滅して土地を返却することになります。その中で、これらの違いを見ていく時にポイントとなるのは、
・期間
・土地の返却時の状況
・用途
の3つです。それぞれ見てきます。
一般定期借地権とは?
一般定期借地権とは、
契約期間は50年以上で期間満了時に更地にして返却する契約となります。
更地にするということは、返却時に建物を解体する必要がありますので、その費用を見ておく必要があります。
用途に関しては、制限がありませんので、住宅用でもアパートやマンション経営でもお店をするのもOKです。
建物譲渡特約付借地権とは?
次に建物譲渡特約付借地権についてみていきます。
契約期間は、30年以上で契約期間満了時に、地主が建物を買取る契約となります。
用途に関しての制限はありません。
更地にはしないので、建物の解体費用は必要ありません。そして、返却時以降も住みたい場合、賃貸として住むことはできますが家賃は発生してきます。
事業用定期借地権とは?
事業用定期借地権は、事業用とあるとおり、用途が事業用に制限されています。つまり、居住用で使うことは出来ない契約となります。
期間は、10年以上50年未満となります。また、契約期間満了時には、更地での返却が原則です。
借地権と一言で言っても用途は変わってきますので・・・
以上、借地権についての違いを紹介してきました。
一言で借地権と言っても、旧法なのか新法なのかで全然違いますし、更に新法においても、更新出来る一般定期借地権もあれば、更新できない定期借地権もあります。
また、借地権の契約は、地主と買主との契約になりますので、双方の合意によって原則から外れることもありえます。もめない為のルールづくりが借地借家法だったというわけです。
一戸建ての場合、新法の借地借家法の制定以前からある借地権に関しては、旧法での契約を引き継げるものとなっていますので、世の中に販売されている借地権付一戸建の多くは旧法での販売となっています。
マンションでは、定期借地権の物件もあり、中古で販売されているのも時々見かけます。
このような場合、借地権とひとくくりで認識するのは危険ですので、借地権がどういう種類なのか、期間満了時はどういう契約になっているのか、じっくり確認して、その時の状況を出来る限りイメージすることが重要だと思います。